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『猫目のアヤカシ』 第一部 第一話  ブログ用六段 ~欲を喰らふモノ~

2008/11/22 02:07
      十三

 その時、わたしはなぜ? と思わなかった。
 目の前に現れた、それはなんと呼ぶべきか分からない。
 ただ、わたしの描いた絵と同じだった。この世を喰らうもの。
 本当に存在したのだと歓喜すら覚えた。
 これは使いだ。わたしを導く使い。
 自分の描いたキャンバスから現実の世界へと抜け出てきたのだと。
 それがわたしを喰らうためにやってきたことは、明白だった。
 どういう理由で、それは存在して、わたしの元へときたのかは、分からない。
 ただそれは、わたしを殺しに来たのだ。
 死ぬ勇気のないわたしをこの世のしがらみから救い出してくれるのだ。
 だから楽しみだった。
 至福の時はやってこなかった。
 目の前に躍り込んだ見ず知らずの男と小さな少女が、目の前の異形を吹き飛ばしたからだ。
 わたしは、目を見張った。
 目の前にいるのは、青年だった。
 わたしよりも背が高いにんげんだった。
 にんげんが、わたしの描いた餓鬼を圧倒していた。
 その結末を遠くから眺めることができず、わたしは走り出していた。
 自分の姿など気にならなかった。慌てて、校庭まで走り出ると、その様を眺めた。
 ひぃひぃと、悲鳴が届いてくる。
 わたしの耳元に。
 一方的な暴力を受けて嘆く苦しむ赤ん坊のようだった。
 信じられなかった。信じたくなかった。
 あの太い腕、そして、巨体を。
 どこから見ても、わたしの理想だった肉の塊を無造作に殴りつけては、地面に這わせていた。
 わたしは思わず声を上げていた。
「やめて!」とも「殺さないで!」とも。
 だが、青年は躊躇わなかった。
 一方的な暴力で、わたしに至福の時を与えるモノを………。

      十五

 雨の中、月明かりも一緒になって降りそそいでいた。
 一人と一頭を……。
 桜は、それを見ていた。
 胸元に手を当て、はらはらと涙を流し。
 豹魔は、怒っていた。その怒りを全身で、現していた。
「にげだしてんじゃねーよ」
 そう告げると、懐、股の間に潜り込んで、中尸の体勢を崩して、投げる。
 足元から払うように腕で、掬ってやれば巨体はバランスをつかむのは難しい。
 その巨体は、自ら地面へとへたり込む。
 地響きをたて、周囲の大気を震わせ。
 もうそれには戦う気力はないのは目に見えて明らかだった。
 豹魔はゆっくりと杖を構えると、
「この前の続きだ。分かってるだろ?」
 杖の柄、鍔元を親指で軽く撫でる。
 金具がくるりと回った。
 豹魔は、一瞬、腰をたわめ、後ろ足で地を蹴ると、さながら波のうねりの様に一歩ごとに力を溜め、混め、暴力の塊へと変化させ、動き出していた。
 中尸はかなわぬと知ってか、豹魔の動きに合わせて、校庭の土を蹴り、最後のあがきとばかりに、彼の動きに答えていた。
 そしてすれ違いざまに、剣光が一閃した。

      十六

 肉が爆ぜ、鮮血が宙に舞う。
 まさに血の雨。
 それが、本物の雨と重なり。
 大地を汚した。
 雨は禊ぎ。恵みのはずだった。
 汚れと禊ぎと。
 力強く混ざり合った。

      十七

 少女は、ふらふらと歩み寄った。
 青年へと向かって。
 少女は、力無く、うつろいだ躯のように交互に足を動かしていた。
 青年は、顔を上げると悲しげに何事か呟いた。
 少女の耳には、それは当然届かない。
 青年は、雨をその頬と全身で受け止めていた。
 少女は、やっと青年の側へとたどり着いた。思いきりその頬を平手で、打った。
 青年は、無防備のままにその平手を頬で受けた。サングラスが飛んだ。
 少女は、青年の顔を見上げると、悲鳴を上げた。

      十八

 物語はここから、全てはここから始まった。




     『猫目のアヤカシ』~欲を喰らふモノ~ 
     第一部 第一話  ブログ用六段 了

     『猫目のアヤカシ』~闇に遊ぶモノ~
     第一部 第二話  ブログ用一段 へ続く
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