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『猫目のアヤカシ』 第一部 二話 ~闇に遊ぶモノ~ ブログ用三段

2009/03/28 00:14
      五

「ふぅん。思ったよりもやるじゃないか」
 サングラスをした少年は、そこにいて、その様子を見下ろしていた。
 その腕には黒猫を抱いている。猫はごろごろと心地よさげに喉を鳴らすと少年の胸板に顔を寄せ、においをこすりつける。
「しかし、あのヤサオトコ、いったい何者なんだ?」
 猫がにゃあと鳴いた。少年は喉に指を当てるとそのままくすぐる。
「まぁ、いいか、いまさらコマが増えたところで、なにも変わらないし。どうせすぐにご退場願うことになるだろうしなぁ」
 そういうと頭を軽く掻いた。
「問題は、あれよりも僕の下僕を持ってちゃった人間だよな。まさか言う事聞かなくなるなんて思わなかったし。ねぇ? 君はどう思う?」
 少年は黒猫に語りかける。猫はなにも答えずにパタパタと尻尾を揺らした。
「君にわかるわけがないか、仕方ないよね」
 少年は猫を抱く手をぱっと離した。
 黒猫はすたりと着地すると見上げる。
「行きな」と少年。猫は未練を残してるのか動こうとしない。「適当にとりつくやつを見つけて悪さをするが良い」
 にゃあ、と猫が鳴いた。同時に闇の中に溶け込んで消える。そのとき、猫の足元でもぞりとちいさななにかが尺を取る。少年は、サングラスをかけなおして空を見上げた。
「豹魔は僕のもとにくる。でも、もう少し時間がかかりそうだよね。なんか僕の想像しない方向に動いてるみたいだけど……」少年は、言葉を溜める。
 月を見つめ「まぁ、いっか!」と、どこか楽しそうに声を上げた。

      六

 西安寺桜は翌日、学校に顔を出さなかった。
 結局彼女が、学校に登校したのは、あの事件があって三日後のことだった。
「なんで?」
 わたしは、絶句していた。
 美術室も、その窓枠も、そして校庭も、彼らが暴れた痕跡がそこにはなかった。
「先輩、風邪はもう良いんですか?」
 後輩に声をかけられて振り向いた。
「ええ、大丈夫。ありがとう」
 きゃーきゃーと彼女たちの声が、少しうるさかった。
 わたしはそれを無視して、あの青年が、わたしの書いたモノを校庭へと投げ飛ばした場所へと歩み寄る。たしかに窓ガラスは割れ、窓枠はへしゃげ、このコンクリートの壁も破壊して外へと投げ飛ばしたはずなのに。
「どうして……」
 あれを直すには、一日二日ではできないはずだ。なのに学校は元の姿のまま、わたしを出迎える。そっと窓枠に手を当て、撫でた。
「えっ?」
「西安寺先輩?」と後輩がわたしのことを呼んだ。
 だけどわたしは無視して、その窓枠にもう一度指を滑らせた。
 わたしの指先は、はっきりとその違和感を感じた。
 間違いなくペンキが、新しくなっている。昔と違和感を感じさせないように手は入れられているけど、間違いなかった。
「どうして?」
 はっとして、窓に手を当てると鍵を開けてみた。
 からからと、音を立てて動く。まるで油を差したみたいにスムーズだった。
「まさか」
 わたしは信じられなかった。だけど、これが答えのような気がした。
「先輩、どうかしたんですか?」
 再び、わたしのことを呼ぶ声が聞こえる。
 けど、耳には届かない。 
 あの夜、見たもの。そして聞いた。
 異形の瞳を持った青年がわたしに行った言葉。
 それを思い出した瞬間、ずぐりとわたしのお腹が動いた。
「いっ!」
 瞬間的に思い出す。あの青年の素顔。
「もういちど、あいたい……」
 思わず呟いていた。
「西安寺先輩、どうしたんですか?」
 そう言って、後輩達が駆け寄ってくる。が、ふとに足を止めた。
 少しおびえているさまが分かった。
 なぜだろう? 彼女たちに振り返って顔を見たワケじゃないのに。
 彼女たちは、わたしが、笑っていることが不気味に感じているのだと、なんとなく理解できた。思わず不思議に思って口元に指を当てる。
「ほんとだ」
 確かに、口元がほころんでいた。
 なぜ笑うのだろう?
 なにがおかしいのだろう?
 わからない。わからない、けど。
 一つだけはっきりとしている感情があった。
 あの猫の瞳を持った青年に会いたい。
「あって、ころしたい」
 そう……。
「こんどは、ころす」
 そう、わたしは、はっきりと感情を口にした。
 そう呟いた瞬間、その声が聞こえたのか、後輩達が走り去る。
 わたしは、気にしなかった。

    『猫目のアヤカシ』~闇に遊ぶモノ~
     第一部 第二話 ブログ用三段 了
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