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『猫目のアヤカシ』 第一部 第一話  ブログ用三段 ~欲を喰らふモノ~

2008/10/31 20:20
      九

 夜の路地。住宅街を静寂が包んでいた。
 小さく無数に走る路地を少女と杖をついた青年と白猫の二人と一匹の奇妙なトリオがひたひたと歩いていた。
 青年は杖の先端で地面を叩いているが、先導は少女が行っている。
 不意に白猫が口を開いた。
『ところで、戦う前に一つおさらいしておきたいのじゃが、よいか?』
「おさらい?」
『うむ、我らが今から狩るモノのことじゃ、敵を知り、己を知れば百戦危うからずと言うであろう?』
「最後の残っているのは、彭常子(ほうじょうし)だろ? 獣の姿をした虫で、人の欲を喰らう」
『喰らうのではない。三尸は元々人の身体に棲む虫で、泰山府君の使いなのは知っておるな?』
 猫はひたひたと前を歩きながら、後を歩く豹魔と静に語りかける。
「司命神じゃなかったんですか?」と静。
『泰山府君じゃ、今、力が残っておる数少ない神の一人じゃしな』
「三尸は人の善行、悪行の行いを常に監視して、庚申の日にその人の行いを地獄の閻魔様にまで、報告をしに行くんだよな。それによって寿命が決めるんだろ?」
 豹魔は、静に手を引かれながら、答えた。
「プルヌス様。今回豹魔さんに命が下って、狩っているのは、三尸なんですよね?」
『そうじゃ。現に三頭いたであろう?』
「わたし、どうしても納得できなくて……」
『なぜじゃ?』
「三尸が出る時期から少し離れてると思うんですよ」
「暦の上での三ノ庚申は五月の末日ですよね。なんで、今になって三尸が暴れてるんでしょう」
『いまじゃから、三尸が暴れておるのだ。今日は六月の半じゃろう? 必ずしも抜けた虫が、すぐに活動をするとは限らぬであろう?』
「力を蓄えていたってことですか? プルヌス様」
『そうじゃ、影響が出るまで半月以上の月日がかかる。皮肉なことに三頭いたからこそ、こっちも早く対処できた』と猫は苦々しく呟く。
「その分、被害者もでた」と豹魔。
『うむ、そうじゃな。しかも狩人であるぬしらの間にも犠牲者は出でしもうた。じゃが本部の凪洟に増援を要請するわけにもいかぬ』
「なぜですか?」と静。
『関東も一杯一杯ということなのじゃろう。こちらはこちらでなんとかするしかない』
 猫の声はどこか弾んでいるようにも聞こえた。
「プルヌス様、楽しんでませんか?」と静。
『楽しんでなどおらぬ』と猫。『静、おぬし少し不謹慎ではないか』
「そんな……」
「静」と豹魔。
「はい」
「それでいいんだ。よけいな狩人や、退魔師をこれ以上、京都に呼びたくない」
 豹魔は、不意にポツリと呟いた。静は思わずかれの手の握る掌に力を込めた。猫も黙り込む。
「でも……。今回のは、なにか違うような……」静は、迷いながら頬に指を当てた。
『ふむ、静はそう感じるものがあるのか?』
 静の表情を見ながら、猫は不思議そうに首を傾げる。
「はい、どの虫も虫と呼ぶには……、プルヌス様はなにも感じませんでしたか?」
『いや、儂にはいつもの中尸の姿としか思えなんだが』
「一つ、一つの様子がおかしいんですよ。わたしの気のせいならいいんですけど……」
「そんなものは、どうでもいい」
 不意に豹魔が呟いた。静と猫の視線が集まった。
「俺が、倒すんだ。どんなヤツも、あいつも……」
 そう誰にもなにも言わせないほど重い言葉で呟いた。
『………』猫は、黙って豹魔を眺めている。『むっ!』
 不意に視線を前に向けると全身の毛を逆立て、身構える。
 喉の苦から絞り出すように強い威嚇音をあげる。
「っ!」静も顔を正面に向ける。
「静、俺の目になってくれ」
 豹魔の声に従い、手を離すとゆっくり後ろに下がる。
「お願い! わたしに力をかして」
 そう言うと右手をあげた。するとぶかぶかになっている静の上着の袖が膨らんだ。
 豹魔は、手にしていた杖を持ち上げ身構える。杖の柄握ると右手に力を込め左手は軽く添えるだけ。まるで杖を刀に見立てている。流れるように、そっと腰を落とす。膝をしなやかに曲げ、いつでも全身のバネを解放できる体勢を作る。
『わざわざ、向こうから出てきてくれたぞ』
「プルヌスもサポートを頼む」
『まかせろ!』と猫も狩猟の血を解放し、じりじりと全身の力を溜めに入るといつでも解放できるように四肢をたわませた。
 がしゃり。屋根の瓦を踏みつける音。
 向こうもこちらに悟られていることを隠そうとはしないらしい。
 見上げると、3メートルはあろうかという巨体を、今まさに獲物に襲いかかろうとしている猛獣の如く、屋根の上で四つんばいになって、そのつま先に力を溜めている。
「豹魔さん」と静。
『くるぞ!』とプルヌス。
 猫と少女がそう告げたとき、屋根の上で大きな力が爆発した。

      十

「はじまった」だれかが、うふうふと笑った。
 そっと空を見上げる。夜。
「さぁ、ぼくの元に届くかい?」
 うっとりと、告げる。
 にゃあ、と黒猫が鳴いて足下にすり寄ってきた。
「おまえか……」
 ゴロゴロと喉を鳴らして、さらに臭いをこすりつける。
「おまえも、様子が気になるのかい? うふふふっ、お前の出番はあるかな?」
 楽しそうに呟くと猫の身体を無造作に持ち上げ、夜空に放り投げた。
 猫は逆らわない。空中でくるりととんぼを切ると地に向かって行く、その姿を眺めながら両手を上げ夜に向かって声高に謳った。
「さぁ、ぼくの元においで……強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、強くなって、だれよりも強くなって!」
 黒猫の姿が、中空で霞となって消える。そこで一息をついて最後とばかりに叫んだ。
「きみは、ぼくと一緒にえいえんを生きるんだ!」



        『猫目のアヤカシ』
        ~欲を喰らふモノ~
     第一部 第一話  ブログ用三段 了

                           第四段は、来週金曜日更新予定です。
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2巻の打ち合わせ

2008/10/31 06:04
リテイクと打ち合わせ。
2巻は、1巻よりも盛り上がってるよと、言われてほっとする。
リテイク箇所をつぶさに打ち合わせした。

プロデューサーに昼飯をたかる。
ポークジンジャーありがとうございました!
大変美味しゅうございました。

3巻も誠心誠意つとめて頑張らせていただきます。

さて、次巻で最終巻(にしたくないけど、仕方ない。売れてくれることを切に願う。)気合いを入れて頑張らせていただきます。

Top Gear

2008/10/30 01:19
イギリスBBCの自動車を紹介する番組なのですが――
まぁ、その内容のぶっ飛び具合がすさまじいです。

北極点を車で目指してみたり。(一応、人類史上初の偉業を達成している)
中古車を改造して、スペースシャトルを作って宇宙に打ち上げようとしてみたり。(打ち上げたけど失敗)
車を改造して、ドーバー海峡横断してみたり。(三台中二台沈没)
韓国車をバカにしてみたり。(燃費が悪かったり値段の割りにスペックが低いからどうしようもない)

芸人でもここまで体を張るか?  と言うノリで司会者達が挑みます。
かなりキツイ、ブラックジョークと、スタッフの罵りあい。愚痴。
なぜか、ついつい見てしまう不思議な番組です。

ある日、見ていて気がついたのですが、『水曜どうでしょう? クラッシック』の様な空気がするのです。(予算とか半端なく違いますが) その事に気がついたときなぜ面白いのかわかったような気がします。
『どうでしょう?』好きの人は、楽しめるかと。

興味のある方は是非ご覧ください。

CSI:NY 第3話 アメリカンドリーマーズ

2008/10/29 06:27
CSI:NY 第三話の感想など

録画したのを飯休憩がてら、やっと見ました。
ラストシーンが、悲しいですね。
ファイルがまた一つ増えるシーンは、悔しさすら感じました。
でも、同時にテイラーとステラの友情が良かった。
都会にあこがれる若者達の想いは、どこの国も変わらないのだと正直、思ったり思わなかったり。

今の科学捜査は、どこまで来てるのか見るたびに気になります。

日本の科捜研は、ここまでおしゃれじゃないんでしょうけどね。
アメリカのCSIも本物はここまでかっこよくないんだろうけど、まぁ、そこはドラマと言うことで――

科捜研の女と比べると、日本のドラマってしょぼく見えてしまうのが、なんとも。
ただ、まぁ、予算の差はあるからなぁ……。難しいモノですねぇ。
[CSI:NY 第3話 アメリカンドリーマーズ]の続きを読む

歴史に残る大事件!  ~深夜の馬鹿力2~

2008/10/28 18:32
とっしー事件です!

構成の渡辺君がついに!

[歴史に残る大事件!  ~深夜の馬鹿力2~]の続きを読む

深夜の馬鹿力

2008/10/28 02:02
伊集院のラジオかと思われる方がいましたら、今回に限りちょっと違います。
韓国のウォンの時間外取引のことをそう名付けました。(誰が?

今現在時間外で、1457krw (10/28 02:00現在)
明日には、ついに1500krw逝くのでしょうか?

アジア通貨危機の再来にならなければいいのですが……。
さすがに、10年前と違い、今回は日本も援助できないと思いますし。

不況ですねぇ。ほんと――


リンク追加です。

徒然僧:修行僧君のサイトです。

独特の塗りが味を出していて良いものです。

[深夜の馬鹿力]の続きを読む

チェック

2008/10/27 00:29
三巻執筆に伴い、過去のをまとめて読み返していると、一巻の最終章で、ちょっとした抜けを発見……。
ありゃま! こんな大穴開けてたの? 慌てて修正をする。

ここに至るまでに、編集さん、構成さん、プロデューサーさん、ディレクターさん、etc.etc.他にも社内の複数人がチェックしてたはずなのに……。

人間のすることに完璧は無いのだなぁと改めて思い知らされる。

さて、三巻も執筆開始。一応ここで締めと言うことなので、気合い入れて書こう。
これを書き終わると、しばらく玉兎達とお別れになるのが少々悲しい気分。
まぁ、そうも言ってられないので、気合いを入れることにします。
[チェック]の続きを読む

イナズマイレブン 4話 & リンク追加

2008/10/26 15:51
はい、本日もイナズマイレブン

感想のお時間がやってきました。

4話を一言で表すなら、



展開はやっ!


ねぇ? これ何クールやんの? マジで?

4話で、ここまでやるってことは、まさか1クール?

そんなわけないよね? ねっ? ねっ? ねっ?

ツンデレヒーロー豪炎寺くんは、もうデレはじめてるし。


豪炎寺、可愛いな、コンチキショウ。


これで、理事長の娘までデレたら、

全キャラ陥落じゃないですか。

フットボールフロンティアの参加費も

学園が負担することになったし。

そんなに円堂守が良いのか?

いや、円堂も好きなんだけどね。

こういうオーソドックス熱血漢は、良いわぁ。

と言うわけで、何一つ内容について触れぬまま、

今日の感想はここまでと言うことで。




これのどこが感想かって?



えっ、だってネタバレしちゃ悪いじゃないですか?





ところで、某所の実況スレで、

>とりあえず何したら反則になるんだこの世界のサッカーは

と言うツッコミがありましたが、


自分の答えなのですが、

何してもOKなんじゃない?

と思ってます。マジな話。





あんなん、まともなサッカーじゃねーよ。
いや面白いから許すけどね。はまってるし。(ぉぃ

因みにゲームは、オフサイドにだけやたらと厳しいそうです。(笑



リンク追加です。

赤色液体製作所

ライター仲間にして、

古い友人である館山緑さんのブログです。

自分のホラー感は、

館山さんに多大なる影響を受けています。

才能もあり、至極まじめなライターさんです。

是非遊びに行ってあげてください。
[イナズマイレブン 4話 & リンク追加]の続きを読む

半径500メートルの人生

2008/10/26 02:28
画家フェルメールの人生を称してそういうそうです。
フェルメールは人生のほとんどを半径500メートル以内ですませたらしいです。

今日の『美の巨人達』の受け売りで始まりました。黒田です。
『美の巨人達』と言う番組が好きで、毎週楽しみにしてるのですが、今週はフェルメールの「小路」がテーマでした。
『美の巨人達』は、毎回テーマの切り口がユニークで実に構成も整っているため素人でも大変わかりやすく、絵の世界に引き込んでくれます。
「小路」の元になった路はどこにあるのだろう? それを探してみようと言うコンセプトで始まりましたが、結局特定の場所はないのではと言う節と、入り乱れているため、答えはでていないようです。

「小路」は、通行人やそこにいる人の顔が描かれていない。
本当に画きたかったのは、その建物であると言われています。
結局、答えはフェルメール本人しか知らないことではありますが、それについて後世の人が色々考察するのは実に面白いことですね。

東京都美術館でフェルメール展がやっているそうですので見に行ってみたくなりました。
やはり、絵は良いものですねぇ。

う~ん

2008/10/25 11:16
蒟蒻効果……。

色々出回ってる陰謀節や、意見を鵜呑みにするつもりはないけど、蒟蒻ゼリーが危ないのなら、マンナンの蒟蒻畑だけでなく、他の類似商品も同様に取り締まるべきじゃないのかなぁと思ったりする。

これで、他の類似商品で、似たような事故が起きた場合どうなるんだろう?

喜び勇んで、それ見たことかー! と鬼の首でも取ったように馬鹿騒ぎをするのだろうか?
それとも、なぜ他の商品も規制しなかったのですか? とやり玉に挙げらられるのか……。

どっちにしろ、マンナンライフが一番の被害者だと思う。

『猫目のアヤカシ』 第一部 第一話  ブログ用二段 ~欲を喰らふモノ~

2008/10/24 17:44
      六

 いくつもの思いが、交差していた。
 それは、この闇が浮かぶ空の上にぽっかりと浮かんだ月が、満ちるように膨らんでゆくのだ。まぁるい形をとるのか、いびつななにかに化けるのかは、今はまだ分からない。
 ただ、思いは決してとぎれることはなく、たえまなく産まれては流れ続ける。
 一部風化したり、腐って溶け落ちたりと、さらにいびつなものへと育っては、変化を続け形を作る。
 成長と呼ぶには、異臭が漂い。
 腐敗と呼ぶには、腐ってもいない。
 進化と呼ぶには、大きな変化もなく。
 退化と呼ぶには、先祖返りもしていない。
 中途半端な状態。
 どう呼ぶべきなのだろうか? それすらもはっきりとしていない。
 だが、一つだけ言えることはある。
 それは、そこにあった。
 今までも、そしてこれからも。
 この先いつまで、そこにあって、肥大化を続けるかはっきりとはしていないが――
 今、そこに確実にそれはあったのだ。
 様々な想いを喰らいながら。

      七

 遠くから、カラスの鳴き声が聞こえた。けっして大きくない鳴き声は木々の間にぶつかり、跳ね、時にはくぐり抜けて、山あいを走り抜け、鳥居の隙間から流れ込んでくる。ときおり所在のしれないカァカァという鳴き声が響くからこそ、人は不安に駆り立てられる。昼間なら、まだ陽の明りに心が支えられ畏怖を覚えることはない。
 が、夜の山ならどうだろう?
 ここ稲荷の総本山、伏見稲荷の参道は鳥居で覆われている。線の鳥居。びっしりと隙間もなくそれが並んでいる。山が産んだ木々がかげり、闇を鳥居がさらに覆うことで、より深く濃いものになっている。闇が濃かった。
 かつり、かつりと石畳の上を歩いている。
 三布袋豹魔(さんほてい ひょうま)は杖をつき足下を探りながら歩いている。
 時折、隣にいる静が、手を取って豹魔を導いていた。
「しずか」と青年は、杖をつきながら、少女に呼びかける。
「はい、どうなさいました?」
 どこかうれしそうに少女は、答え顔を上げた。
「プルヌスは、まだか?」
 豹魔の言葉にはどことなく焦りが含まれている。静はそっと青年の掌を握りしめる。不安を取り除くように、柔らかく、握りしめた掌はわずかに震えていた。
 静は「不安なのですか?」と問いかけたくなるのを堪え、なにも言わずにそっと掌を引いた。自然と豹魔の指先が、少女の小さな掌に絡みつく。
「あれから、少し時間がたちましたね」
「ああ、最後の一頭が、どこにいるのか、まだ見当もつかない」
 そのことが不安なのだろうか? 静はそっと身を寄せ足下に注意を払いながら石畳を歩いた。この前、竹田の水路の側でやり合った影、あれは今彼が追っているアヤカシの一体だった。
「残りは、獣ですね」
「ああ、中尸だ。あいつは獣の姿をしてるはずだから、この世界にとけ込みやすいのかもしれないな?」
「多分そうでしょうね。でも、もうかなり育ってるはずだから、人の前に立てないはずなんですけど……」
 静はそういうと「あっ!」と声を上げる。
「ほら、プルヌス様の使いなら、すぐそこにおいでですよ」
 静はそういうと指さした。
 その先には、首輪と赤いリボンをそのしっぽに巻き付けた猫が一匹、音もなく静の目の前に現れた。
 猫がゆっくりと静の足下へと歩み寄ってくる。少し指先が踊っている。
「そうか……」豹魔は、優しくそう告げるとそっと掌から力を抜いた。「触りたいんだろ?」
「あっ、はい!」
 静はパタパタと足音をたてながら、一人で先に歩み寄る。
 猫は逃げなかった。顔を上げると、静が来るのを黙って待っている。
 静は腰を落とすと、そっとその頭を撫でる。猫は心地よさげにうっとりと瞳を細める。静は楽しそうにその背中を撫でる。
「うふふふ、ほれほれ~! 気持ちいいか~?」
 静はそのままなれた手つきで、背中からしっぽ、果てはお腹までうりうりとほぐすように撫でる。猫はさらにうっとりと石畳の上にごろりと転がって、彼女の小さな掌の愛撫を受け入れていた。豹魔はその様子を少し離れた場所から探るように顔を向けている。
 ゆっくりと顔を上げた。空には鳥居が覆っている。その隙間から闇が降り注いでいる。だが、その闇に裸電球の光が混ざり、夜と呼ぶには中途半端な存在に変えている。
 豹魔は顔を上げて周囲を見るが、彼にはなにも届かない。
 風はだまり、木々や草花の香りを運ばない。周囲に漂うのは、夜の重く鼻にのしかかる香りだけだった。聞こえるのは、ヤミヨに漂うカラスの鳴き声、それすらも彼の身体を覆い尽くすほどの力はなかった。
 光も闇も届かない。夜も昼も届かない存在として己はそこにいる。
 なのに自分はどこをさまよっているのだろう。
 まだ、なにも届かない。自分は、ヤツに近づいているのだろうか?
 今の自分は、ヤツに届くのだろうか?
 心の中で繰返し自問すると、杖を握る掌に力を込める。
 滑り止めの細かい突起が、掌に食い込んだ。
 痛いはずなのに、痛くはなかった。
「――さん」
 さらに握りしめる。
「―魔さん!」
 鉄製の柄はゆがむことはない。
「豹魔さん!」
 少し太めの握り重い。
『おいっ! 豹魔!』
 豹魔の額にめがけて石のつぶてが飛んでくる。豹魔は、反射的に杖の握りに左手を添えて身体の前で、円を描くように杖を跳ね上げつぶてをはじき飛ばした。
「プルヌスか……」
『いつまで、物思いにふけっておるか、中尸の居所が分かったぞ』
 猫が前足をついて、すました顔で豹魔を見つめている。先ほどまで、静にじゃれついていた姿は、どこにもなかった。威厳というか、適度な緊張感をその眼差しに含め、豹魔を睨み付けている。
「プ、プルヌス様、今のはやりすぎです。当たったらどうするんですか?」
 静が、猫に向かって抗議の声を上げた。が猫は口を開き、逆に少女をしかりつけた。
『良い、これが当たるようでは、きゃつの底もたかが知れておる!』
「ですが、プルヌス様!」
「静」と豹魔がたしなめる。
 静は不満そうに豹魔を眺める。
「いいんだ」
「はい。分かりました」静は納得がいかないらしく、まだ言葉尻に不満を漂わせていたが、豹魔に従った。そのまま豹魔の側へと歩み寄る。
「プルヌスの言うとおりだ。気を抜いていた俺が悪い」と豹魔。「で、中尸の居所が分かったのか?」
『ああ、あないする。ついてくるがよい』
 猫はそう告げるとすっと身を翻し、足音を殺し歩き出した。
 静はそっと豹魔の手を取ると猫の後をついて闇の中へと歩き出した。
『中尸は手強くなっておる。油断するでないぞ』

      八

 複数の人間が、ざわめいた声を上げる。時折、電話のベルが響いたり、椅子が動いたりとざわついた気配が耐えることがなかった。
 西安寺は椅子に腰を下ろした男性教員と向き合っている。美術部の顧問、小山。
「来月の西賀茂展覧会に提出できる作品が無くなったと聞いたんだが、本当か?」
 職員室、顧問の小山は言う。わたしは笑っていたのだろうか?
 小山は、不思議そうにわたしの瞳を眺めている。
「なんでだ? 放課後に残って一生懸命書いていたじゃないか、なにか調子が悪いのか?」
「いいえ。そんなことはありません」
 わたしはそう言った。
「そうか、いまから新作を描けるのか……」
「厳しいと思います」
「せっかく、お前の才能を世に出す好機だったのに……」
「わたしに才能などありませんから」
 小山の言葉を遮るように言う。
「またそんなことを言う。先生は、お前の実力が……」
 煩わしく感じて、その続きを止めた。
「小山先生」
「な、なんだ?」
 この人はどうしても、わたしに描かせたいらしい。
 描いても良い。だけど、それはあなたの望み通りのものじゃない。それでもいいの?
 そう、わたしが本当に描きたいもの。望んだもの。
「もし、わたしが、いまからもう一度がんばると言ったら、先生は応援してくれますか?」
 その瞳を見つめた。小山は少しひるんだように見えるけど、すぐさま腰を上げわたしの手を取った。
「あ、ああ……もちろんだ。先生にできることがあったらなんでも言いなさい」
 掌に力を込める。汗でべとべとして気持ち悪い。
 こいつが、わたしにテコ入れするのは自分の評価を高めるためだ。それぐらいわたしにはだって分かっている。普段、部室に来ない顧問。わたしが、描かないと知った途端にこうして、職員室に呼び出す。でも、あなたには、なにもできない。
「ご心配をおかけしました、昨日のわたしはどうかしていたんです」
「ああ、誰にだって疲れているときとかがある。なにかあったら遠慮無く先生に相談しなさい」
「失礼します」と、適当に頭を下げて、職員室を後にする。
 日の光が差し込む廊下、足音を立てながらわたしは歩いた。放課後の学校。
 誰もいない。なにも感じないほど、空虚だった。
「死ねばいいのに」と誰とも泣く呟いたとき、またお腹がうずいた。
 なんだろう? この感覚……。
 わたしは、思わずお腹に手を当てるとずくりと動いたなにか探った。だけど、うずきは消えていた。


        『猫目のアヤカシ』
        ~欲を喰らふモノ~
     第一部 第一話  ブログ用二段 了

                           第三段は、来週金曜日更新予定です。

どーん おぶ ざ でっど

2008/10/24 00:43
ロメオのゾンビを元にしたそうですが。

う~ん。

やはりTV版だとカットが多くて残念でした。

まぁ、残虐だから仕方ないよね!

CJが、かっこよかった。

それなりに満足でした。


しかし、なんでゾンビは人間だけピインポイントで襲えるんだろう?
ワンコとか無視というのが、不思議で仕方がない。
[どーん おぶ ざ でっど]の続きを読む

ブログについて

2008/10/23 20:24
本格的にはじめるつもりでブログを開始したが、まだまだわからないことが多い。
自分の執筆した作品を紹介したり、アフェリエイトをつけたいのだけど、どうすればいいのか。
色々勉強しなければいけないことが多いのだが、いかんせん後一巻分の小説(シナリオなのか?)の執筆が残っていて、その締め切りの都合上、あまり時間がとれない。
仕事はあるが、お金にならないと言う今の状況をなんとか打破したい今日この頃。

近日中に同人の情報もオープンにしていこうと思っています。

そう言えば、同じ同人つながりですが、せっかく小説を張っても、文字が小さいので読みにくいと言うのがあってどうしたらいいモノかと頭を悩ませている。

ここに遊びに来て、猫目を読んでる方がいたら、意見を伺いたい所。

相棒 シーズン7 その1

2008/10/22 22:22
はい、今日から始まりました。

相棒シーズン7 

第一話が次回に続いちゃったのが、消化不良。

いや、楽しめたんですけどね。

ネタバレを描くわけにも行かないので、何ともなのですが、

米沢さんが、相変わらずいい味を出してました。

右京さんは相も変わらずお茶目だし。

薫ちゃんは、今期でさよならという話を聞きましたが

一体どうなるんでしょうねぇ……。

新しい相棒をくわえて、続けるのか?

それともシーズン7で終わっちゃうのか?

どういう結末を迎えるのか相棒シーズン7

しっかり見ていこうと思ってます。



ところでなんで、映画のタイトル 逃げた女房 じゃないんだろう?
米沢さんの奥さんが絡むと聞いたので、密かに楽しみにしてました。

おっ、終わった……

2008/10/22 19:47
二巻執筆終了……。

提出しました。チェック待ち。

リテイクどれだけ来るかねぇ。

相棒シーズン7の前に間に合って良かった。

ビール片手にがっつり楽しもう。


そして、リンクありがとうございます!


isnchi:isさんのサイト。個性的な絵が可愛いです。


一休み:一休さんのサイト。すじを極めつつある男。


yumemakurar.com:夢枕人しょーさんのサイト。

4コマガンバりゃー!

CSI:NY

2008/10/22 00:14
CSI:NY

CSI:NYシリーズは、マイアミのスピンオフから

始まったようですね。

特にマック・テイラーがかっこよくて好きです。

NYシリーズだけキャラごとに

得意ジャンルがないのが特徴ですね。

(CSIのグリッソムは虫が好き

 マイアミのホレイショは爆破処理班出身、等)

今日のお昼は、3話アメリカンドリーマーズ。


第一話の「まばたき」は、マックの過去に

ふれるような流れでお話が展開し、

ラストシーンの「ビーチボールが捨てられない」

の告白には涙腺が刺激されました。


第二話の「夜の獣たち」では、ステラの正義感に

スポットが当てられ、かっこいい女性の姿を

描いていたように思います。

ラストで犯罪者を見送る姿はかっこよかった。


今日放送の3話は、誰にスポットを当てるのか

今から楽しみです。

海外物のドラマは、クオリティーが一々高いので、

見ていて飽きません。

あと、勉強できて盗む所が多いです。

シナリオの勉強のつもりで見ています。

あ、当然ですが日本の刑事物ドラマも大好きです。

「おみやさん」と「相棒」が今から楽しみです。

アニメ感想 & 日記

2008/10/21 01:49
ブログ本格始動開始しました。

今、二巻の最終章を執筆してるのですが――

いや、難しいです。後もう少しなのになぁ……。

二巻の執筆がすんだら、三巻だ。

がんばろう。




紫電式:蔓君のサイト。

青空画廊伝説:弐号。さんのサイト。

限定解除:ねぎねこくんのサイト。

ぶるりば:はにーのサイト。

童唄:いふじシンセン様のサイト。

optimistic:Luuさまのサイト。

そらごと:藤姫空さんのサイト。

Clow・Clover:真島結城氏のサイト。

上記のサイトに、リンクをはらせていただきました。

ありがとうございます。m(_ _)m

今後ともよろしくお願いします。


さて、アニメの感想です。

今期で一番好きなのは、イナズマイレブンです。

面白いわ。久しぶりに王道のスポコンを見てます。

レベルファイヴのゲームが原案みたいですね。

思わずプレイしたくなる出来です。

いやはや。こりゃ今後の展開が楽しみです。

子供にどう評価を受けているのか、気になります。

子供が面白いと思ってこのアニメを見てるのなら、

うれしいですね。

キャラも魅力的で、

3話の豪炎寺を無理して誘わない所とか、

敵役かと思われた理事長の娘のさりげないフォローとか、

良いなぁと思いました。

ただ、風丸、少し腐女子受け狙ってないか?(笑

ネタバレかしら? だとしたらごめんなさい。


4クールだとしたら展開がかなり早い感じがしますが。

今後上手くやってくれることを信じてます。

興味を持たれた方は是非ご覧ください。



豪炎寺と理事長の娘が本気で激萌なのはきみとぼくとの秘密だ。

『猫目のアヤカシ』 第一部 第一話  ブログ用一段 ~欲を喰らふモノ~

2008/10/20 10:35
   遠くから見える意志。

   かさり、かさりと、何度か繰返して音は響いた。

   見られている。そう感じたとき、男は顔を上げる。

   なんだろう、これは? そう思った。

   そして、視界は暗転した。


    『猫目のアヤカシ』 第一部 第一話  ブログ用一段
      ~欲を喰らふモノ~
              文 黒田百年
              絵 蔓

      一

 青年は疾駆した。地を蹴り腰をひねるようにまわしながら……。
 その動きは、ともすればスキップしているような動きに見えなくもない。問題はその速度である。一呼吸のうちに六間の間合いを一瞬で詰めたのだ。目の前には、大きな羆のような黒い影が、のそりと身を起こして青年を待ちかまえている。身体は人間、だがその顔は牛の顔という異形。
 彼は影の間合いに入るやいなや腰を落とした。その上半身が、なめらかに前傾姿勢をとった。それに遅れて、頭のあった空間をナイフよりも鋭い爪が走り抜ける。
 青年の髪の毛の何本かが宙に舞った。
 当たらない。
 そのまま地面を踏みしめると上半身を素早く起こし影の胴体に肉薄する。くっと息を吐き出すと同時に零距離、無間とよばれる間合いで、肘の一撃を影の身体にたたき込んだ。影が呼吸に喘ぐ隙をついて、するりとその背後に回り込み、頸に腕をまわす。
 青年は躊躇うことなく、腕に力を込めた。
 ぐぎ!
 鈍い音がした。
 折ったのだ。その頸の骨、頸椎を迷うことなく――
 しばらく影の身体を抱いていた。死を確かめるまで腕から力を抜かなかった。
 やがて影がずるりと崩れ落ちその様子を見下ろした。サングラスをかけているため、なにを思っているのか、その瞳から考えを読み取ることはできない。
 だが、なんとなく、悲しみを口元に浮かべているようにも見えた。
 彼が見下ろすのは、物言わぬ骸のはず。その影が、まるで夜の空気に溶け込むよう、うっすらと消え始めた。それが音も立てずに闇と一つになったとき――
「また、違ったよ」
 空を見上げる。物言わぬ月明かりが、青年の頬にやさしく降り注いだ。
 右手を空に向かって突き出すと、月を握りしめるよう掌に力を込めた。
「見えたと思ったのに」
 青年は、月から放たれる銀色の光圧を全身で受け止めながら「しずか……」と名前を呼ぶ。
「豹魔さん、終わりましたか?」
 呼ばれると同時に、幼い少女がひょっこりと空から降ってきた。むき出しのコンクリートの堤防。そして水が流れていない水路の床に、ぺたりと足から下り膝をついて衝撃を殺す。ワンピースに袖の長いTシャツを羽織っただけの姿。スカートがシャツごとめくれて着地する一瞬下着があらわになっているが、特に気にした様子も見せなかった。少女は、利発そうなまなざしを持っている。そしてその長い髪の毛は二本のお下げにしている。おてんばな少女。その表現が似合う。
「ああ、終わった。残るは、後一頭だけだ」
 静はそっと周囲を見渡すと、闇の中身を覗き込む。確かに気配は消えていた。
 右手を伸ばして軽く振る。
 彼女の小さな掌から、一つの肉の塊が飛んでゆく。ぽちゃりと音を立てる。
「どうした、静?」
 青年は、そう言うと水音の立った方に、おぼつかない足取りで、ふらふらと歩き出した。一歩一歩確かめるように、地面を安定しない足取りだ。
「あっ、待ってください、今、杖を」
 静は、はっとすると慌てて打ちっ放しのコンクリの床に転がっている杖の側まで走りって、よいしょと両手で抱えあげた。少し重いのか、足下がおぼつかない感じだ。よたよたと上半身が揺れる。
「相変わらず、重いぃ~」
 小さな身体で、地面に転がっていた杖を抱え上げる。杖を垂直に立てたら少女の肩口を越えるほどの長さがある。しかも鉄でできているのだからやはりかなりの重量がある。
「静?」
 静が苦しんでいる気配を察したのか、青年は再び少女の名を呼んだ。
「だっ、大丈夫です」
 少女は、そう告げると、青年の側まで、よいしょよいしょと杖を運んだ。ガリガリと地面をこすりつけながら――
「はい」
 青年の側に歩み寄ると満面の笑みで、杖を手渡そうとするが、彼はそれを無言で手にして無造作に地面を軽く叩きながら歩き出した。
「あ、待ってください。そっちじゃないですよぅ」
 静は、そんな青年の開いてる左手をそっと取ると、やさしいペースで導きはじめる。
「こっちですよ。豹魔さん」
 青年を気遣うしぐさ。だが、彼は無言で少女の腕に従うだけで、礼も何もいわなかった。静は手を引きながらゆったりと歩幅をあわせ歩いている。
「今夜は、肉じゃがで良いですか?」
「好きにすればいい」
「むぅ~。じゃあ、なにか食べたいものあります?」
「勝手にしろ」
「もう、そういう言い方しなくても良いじゃないですか? 虫を一頭倒したんですから、なんでも好きなもの作ってあげますよ」
 静はうれしそうにそう問い掛ける。だが、豹魔は答えない、ただ少し足に力をこめるだけだった。
「あ、豹魔さん、地下鉄の竹田駅はこっちです! そっちいっちゃだめですよぉ、スロープはこっちにしかないんですから、地上にあがれませんよ!」
「わっ、わかってる」豹魔の声が、慌てて追いかけてきた。

      二

「西安寺先輩、お疲れ様でした~」
 バタバタと響く足音。同時に音を立てて横に滑る木製の扉。滑車ががらがらと乾いた音をあげる。一人には広い美術部の部室。
 軽く振り返るだけで、さらりと西安寺の黒く長い髪の毛が揺れた。大きめの瞳その光はどことなく沈んでいた。
「お疲れ様、気をつけて帰りなさい」
 西安寺 桜は、後輩達を見送ると人気のない美術室に一人のこりキャンバスに向き直った。油絵の具独特の香りが鼻孔をくすぐる。彼女は、その香りが嫌いじゃなかった。
 パレットを手に取ると、一人じっと描きかけの絵に向き直る。
 空虚な視線、無言でそれを見つめていた。
 動かないままに、その描いたものに視線を向けている。長い沈黙だった。
「なんで、こんなことしてるんだろう」
 西安寺 桜はため息をつくと、パレットに筆を置いた。じっと眺める。
 キャンバスに描かれたそれ。
 じっと眺めてから菱形のパレットナイフを無造作に手に取るとキャンバスを斬りつけた。布が裂かれる音。そして、大きくバツの字にキャンバスは引き裂かれる。
 その様子を無言で眺めていた。
 遠くから、カラスの鳴き声が聞こえてくる。日は陰り、傾き、茜色の光線となって美術室に差し込んできている。まだ、日は落ちてない。
 六月の日差しは夏へと移ろっているが、まだ、どこか晩春の香りが感じられる。
 逢魔が時、そして水無月。
 季節もそして時間も変わっている。桜はそっと自分が切り裂いたキャンバスに手を伸ばした。いとおしげに撫でる。そのまま時間だけが過ぎた。
「死ねばいいのに」無表情のままに呟くとキャンバスに背を向けて、片づけを始める。
 それから桜の胃の下あたりがずくりとうずいた。強い違和感を覚えてそっとお腹を撫でる。その時、誰かが桜を見ているような気がして、慌てて振り返ると周囲を眺めた。
 だが、誰もいない。
「………」
 唇を真一文字に結び、じっと昼と夜の中間時点を眺めていた。
 のそりと、なにかが動いたような気がする。
 目をこらすと、そこにはなにもいない。「気のせい?」と思わず一人ごちた。
 闇は答えなかった。

      三

 ふありとロングスカートが花びらのように広がった。大きく、そして、大量の空気を孕んで……。音もなく地面へと飛び降りると、そっと手を挙げ、水鏡に指先を当てる。そのままゆるゆるとまわした。波紋が広がる。
 そこには大きな影が、うごめいていた。人の形をとっているのではなく、大きな影が四つんばいになっていた。それはもごもごとうごめいて肉の塊をとる。
「ふむ……」と一息。指先が水面から離れたとき、ぽたりと一粒の雫が水面で跳ねた。その表面でゆらりと水が揺れた。
「余りよい兆候ではないの。うむぅう、思ったよりも育っておる」
 そう告げると、軽く水面を掌で叩いた。
 ぱしゃ、と音を立て、水が爆ぜた。鏡に映っていたものは、水面で型どることもかなわずに消える。
「アンズ、おるか?」
 そうすこし強めの言葉で問いかけたとき、きしっと床の羽目板が音を立てる。
「ふむ、よう来たな。すまぬが少し使いにでてくれぬか?」
 言葉と同時に、まるい気配が消えた。
「さて、急がねばならぬが、適度に邪魔をしておかねばならぬのう」
 声の主はそういうと、ゆっくり歩き出す。そのまま部屋の隅に置いてある錫杖を手に取ると軽くそれを振った。
「うむ! 調子は悪くない」
 じゃらんっと、金属が重なる音。壁際まで歩み寄ると戸棚を開ける。小さな壺やら硝子瓶が並んでいた。その蓋を取ると中から無造作に、中のものを摘むと握りしめる。いくつか物色して再び水鏡の前に立つと、単音節の言葉を一つ一つ落とす。手を振りながら水鏡の中へと鎮めてゆく。
「――――、―――――、――! ―――、――、―――――――!」
 ぐるりぐるりと、彼女が投げ込んだ触媒により穴が穿たれた場所に、ひずみが産まれそれ、流れて、やがて螺旋を作る。そのまま一つのうずになる。
「――! ―――――! ――!」
 うずは巻いて、やがて水鏡から時空に穴を穿つ。
「――――! ――!」
 赤色の光を放ち始める。
「――――――!」
 水ではなく、光が爆ぜた。肩で息をつく。
 そのまま、顔を上げると満足そうに微笑んだ。

      四

「おかえりなさい。お疲れ様だったわね」
 少女の指先に、ヒルが這っていた。
 のたくたと指先の先端でフリフリと頭を上げている。
 少女は、耳を寄せその言葉を聞いていた。
「そう……」
 真剣な顔つき。
「途中で、三尸の気配を失ったのね」
 変だと少女は思った。
「引き続き探ってくれる?」
 そう少女が呟くと指先を這っていたヒルを優しく地面に置いた。
 ひょこひょこと尺を取りながら、それは闇の中へと消えてゆく。
 少女は、腰を上げる。
 三尸は宿主がいて初めて、生きることが許される虫である。
 いくら、暴走、肥大化し人に仇をなすアヤカシに化けたとしても、宿主なくして生存はできない。
 三尸とは、人の醜い欲を喰らい生存する虫。人体に寄生する霊虫だ。
「どうして、消えることができるのだろう?」
 少女は思わず一人ごちると夜空を見上げた。

      五

「ふむ、まだ、ぼくが見えてないのか」
 サングラスをした男は、どこかさみしそうに微笑んだ。
「ぼくの姿は、まだかれには見えないか……」
 ゆっくりと、した仕草でサングラスをはずすと月を眺める。
「うん、良い月だ」
 どこか、悲しそうに、楽しそうに、そんな感情を込めている。
「かれにはこの月が見えないのかな?」
 誰かに語りかける言葉。
「追っておいで、早く」
 そういうと月に向かって掌を伸ばした。
 空をつかむ行為。当然ながら、それはできない。
 大きく広げた掌をそっと握りしめる。
 ぎゅっと音がする。
「ぼくは、君を待ってる」
 それぞれの思いが交差する夜。
 ゆっくりと物語は、進みはじめた。


        『猫目のアヤカシ』
        ~欲を喰らふモノ~
     第一部 第一話  ブログ用一段 了

                           第二段は、今週末金曜日更新予定です。
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